開発協力
1.ボツワナとの開発協力
ボツワナ政府は、2036年までの長期開発戦略を示した「VISION 2036」に基づき累次の国家開発計画(現在は暫定国家開発計画(2023年4月から2025年3月)を実施中。第12次国家開発計画は、2024年の総選挙後に策定される見込み。)において、産業多角化の推進、人材育成、社会開発、天然資源の持続的な利用、効率的な管理と評価システムの実施等を優先分野として取組を進めています。これを踏まえ、日本は、対ボツワナ国別開発協力方針に基づき「産業多角化に向けた環境整備」と「貧困削減及び生活の質の向上」を重点分野とし、(1)JICAの財政支援や技術協力・研修・協力隊派遣を通じた運輸・情報通信や電力などの社会経済インフラ整備・産業多角化に向けた民間セクター開発のためのキャパビル等、(2)NGOや国際機関等と連携した草の根無償や緊急援助による脆弱層へのアプローチの二本立てにより、ボツワナの、誰も取り残されない、質の高い経済成長を支援しています。
現在、円借款、技術協力や協力隊派遣など主要なプロジェクトは、独立行政法人国際協力機構(JICA)ボツワナ支所が実施しており、当館は、原則、対ボツワナの開発協力に関する政策の企画・立案を行っていますが、NGOや地方自治体等と連携した草の根無償資、国際機関を通じた緊急援助を実施しており、ボツワナ国民の生活に寄り添った日本の顔が見える開発協力を推進しています。
2.TICADとボツワナの関係
アフリカ開発会議(TICAD)は日本が提唱して1993年に始めたアフリカ開発問題を話し合う国際会議です。今日、TICADは、日本に加え、国連、国連開発計画、世界銀行、アフリカ連合委員会を共催者として開催される多国間の会議です。この会議は各国政府だけでなく国際・地域機関、開発パートナー、民間企業、市民社会にも開かれたフォーラムとなっています。
ボツワナは、1993年の第1回会議(TICAD I)から首脳が招待された国の一つです。それ以来、ボツワナはすべてのTICAD関連会議に参加し、日本との間で開発戦略の改善のために議論を深め、国連や市民団体等さまざまなルートを通じて強固な協力関係を築いてきました。特に、日本とボツワナの開発協力において、TICADは極めて重要な意義を持っています。2003年の第4回会議(TICAD4)では、「人間の安全保障」の重要性が強調されました。当館では、この「人間の安全保障」の観点から、既に1997年より草の根・人間の安全保障無償資金協力(以下、草の根無償)(創設時の名称は「小規模無償資金協力」、その後、「草の根無償資金協力」と変遷し、2003年より現在の名称となった。)を通じ、人々の生活にフォーカスした事業を実施しており、2024年1月時点で、教育、保健分野を中心に66件のプロジェクトを実施しています。
2013年の第5回会議(TICAD5)の両国首脳会談では、地上デジタル放送分野における二国間協力が進展し、約10年の歳月が流れ、2022年10月、ボツワナは、日本国外では初めて、日本方式による地上デジタル放送へ完全移行を達成するという成果を残しました。
2019年の第7回会議(TICAD7)の両国外相会談では、ボツワナの食糧安全保障と産業多角化の観点から、ボツワナ農業の近代化の重要性が話し合われ、現在、無償資金協力を通じた農業プロジェクト(農業機材の供与や農業技術(節水型水耕栽培)の導入)が進行中です。
3.2023年(令和5年)の当館実施事業の振返り
3月9日、令和4年度草の根無償「マルラマンティ・コミュニティ中学校特別支援学級棟建設計画」契約署名式が、ハボローネ市内で行われました。本計画は、特別支援学級棟の建設を通じ、同中学校においてインクルーシブ教育の質を向上することを目的としております。
昨年、当館は、ボツワナ国民の生活に寄り添った日本の顔の見える開発協力事業を着実に実施しました。
4.ボツワナにおける草の根・人間の安全保障無償資金協力

当館では、ボツワナ国内の多くの団体から提出された要請について、実現可能性、裨益効果等の観点から審査します。そして絞り込まれた要請案件について、発展途上国の開発に知見のある日本人職員と地域の実情に詳しいボツワナ人職員がペアとなって、現地のプロジェクト予定サイトを訪問し(場所によっては飛行機や車を乗り継いで片道1日以上かかることもあります。)、実地調査や被供与団体・コミュニティの方々からその地域の開発ニーズを聞き取りながら、丁寧に案件を作り上げていきます。
事業が開始されてからは、不測の事態が生じても事業が滞らないよう、常に被供与団体と密なコミュニケーションを取りながら、適宜、プロジェクトサイト訪問やアドバイスを行いながら、確実に事業を完遂するよう努めております。
当館と被供与団体との贈与契約時や事業完了時には、地元の人々はもちろんのこと、政府要人、地元選出国会議員やマスメディア関係者を招いて盛大に式典を行うことで、この事業が日本国民の皆様からの贈り物であることを広報し、日本のプレゼンスの向上に努めております。
供与された機材や建物がしっかりと地域のために役立ってもらうために、当館では、事業完了時の完了検査に加え、2年後フォローアップ・モニタリングなどを計画的に実施しております。このような現地訪問をしていく中で、別の団体関係者と接点が生まれ、新たな地域の開発課題が発見され、ここから新たな案件が作り出されることもあります。
草の根無償のスキーム概要、実績及び申請方法は以下のリンクをご覧下さい。
<2025年度申請について>
2025年度(2025年4月 – 2026年3月)実施分の申請を受け付けています(締め切り:2025年5月21日)。
応募上の注意:
(1) 所定の提出書類に不足・不備がある場合は書類選考の対象となりません。十分御注意ください。
(2) 提出書類は返却いたしません。
(3) 同一組織が複数の案件を申請することはできません。
(4) 支援できる案件件数が限られているため,条件を満たす案件であっても,採択されないことがあります。
(5) 御不明な点がございましたら,大使館までお問い合わせください。
- (英語サイト)募集要項(2025年度)(PDF)
(258KB)
- (英語サイト)申請書(2025年度)(Word)
(54KB)
5.ボツワナにおける緊急援助
2018年から、当館では当地国際機関と連携した緊急無償資金貴協力を実施しております。ボツワナは、高中所得国に分類され、アフリカ諸国の中では、比較的豊かな国とされていますが、干ばつなど自然災害に脆弱であり、また都市部と地方部の生活水準の格差が大きく、若者を中心とした高い失業率、社会不安や生活困窮によるGBV(ジェンダーに起因する家庭内暴力)は深刻であり、社会的に極めて脆弱な環境に置かれている多くの人が存在していることを忘れてはなりません。
近年では、コロナ過やウクライナ危機によるサプライチェーンの寸断や物価高騰により、このような問題が顕在化しており、国際機関と連携した緊急援助はますます重要となってきております。当館では、草の根無償とともに、国際機関と連携した緊急無償資金協力事業を通じ、ボツワナの脆弱層へ届く支援を行っています。
実績:
- ボツワナでの予測困難な小雨とヨトウムシによる被害に対する食糧と栄養の安全保障への緊急対応(2018年度:FAO連携)
- ボツワナ国における「顧みられない熱帯病(土壌伝播寄生虫症)」撲滅加速プロジェクト(2019年度:WHO連携)
- ボツワナ国における新型コロナウイルスに起因する脆弱な人々の食糧と栄養の安全保障問題への緊急対応(2020年度:IFRC連携)
- コールド・チェーン整備のための緊急無償資金協力(2021年度:UNICEF連携)
- コロナ禍における脆弱な子どもたちに対する必要不可欠な栄養の継続及び保護サービスの確立支援(2021年度:UNICEF連携)
- ボツワナ北部地域(ンガミランド)における干ばつの影響を受けている世帯・小規模農家に対する食料安全保障改善のためのレジリエンス強化(2023年度:UNDP連携)